障がい者・難病リハビリ病棟の取り組みをお伝えします
障がい者・難病リハビリ病棟では、重度の障がい者や、進行期の難病、特に神経難病の患者さまに、医療・看護・介護・リハビリテーションを通して、多職種で、その人らしく生きるためのお手伝いをしています。在宅療養中の方には在宅サポート入院(レスパイト入院)をご利用いただいております。
ナースコールの調整~安心して入院生活が送れるように~
障がい者・難病リハビリ病棟には、病気の進行により、普通型ナースコール(図1)を押すことが難しくなる患者様が多く入院されています。作業療法士は患者様の状態に合わせてナースコールの検討・調整を行っています。
普通型のナースコールを押す事が難しい患者様には大きな押しボタンスイッチを設置しています。また、手足を動かすことが難しい患者様には息や声、触れることでナースコールを押すことができるマルチケアコール(図2)などを設置しています。患者様・ご家族様からは「こんなものがあるのね!」「自分で押せるナースコールがあると安心」といった感想を頂いています。
患者様・ご家族が安心して入院生活を送れるよう、今後も患者様の状態に合わせてナースコールの検討・調整を行っていきます。
図1:普通型ナースコール
床ずれに対する電気刺激療法
当院では床ずれ(褥瘡 じょくそう)の治療を医師、リハビリテーションスタッフ、看護師、介護福祉士、管理栄養士、薬剤師などからなるチームで行っています。
床ずれ治療の取り組みの一つとして、電気刺激療法があります。電気刺激療法は「物理療法」の1つで、床ずれの周囲に電気を流し血流を促すことで床ずれの改善を図ります。
日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは他の「物理療法」に比べ推奨されています。
当病棟では通常の床ずれのケアでは改善が得られなかった床ずれに対して、電気刺激療法を試験的に導入しています。その際、リハビリテーションスタッフは電気刺激の設定、電極の位置の設定、姿勢の設定などを行っています。
患者様のQOLの向上をためにも、今後もチームで床ずれの予防、ケアに関わっていきたいと思います。
[床ずれ治療の取り組み 電気刺激療法]
薬剤師がご自宅に伺ってお薬の管理をすることができます
医療保険を利用する「在宅患者訪問薬剤管理指導」・介護保険を利用する「居宅療養管理指導」という薬剤師がご自宅に伺いお薬の管理を行う訪問サービスがあります。医師や看護師、ヘルパーなどによる「在宅訪問」と同じ制度です。
診療のあと、医師が患者さんに必要な薬を記した処方箋を発行しますが、薬剤師による管理指導が必要だと判断した場合はその旨を処方箋に記します。
その処方箋を薬局へ提出していただくと、薬剤師が処方箋に基づいて調剤し、薬を持ってご自宅に訪問します。(もちろん訪問は患者さんの同意後になります)
お宅訪問後、薬剤師は生活に合わせたお薬の管理やセットを行い、お薬の効果・副作用・相互作用、残薬などをチェックし、お薬を安全に飲むための説明や情報提供を行います。訪問結果は医師・介護支援専門員へ報告し、看護師・ヘルパーとも担当者会議などを通じ様々な連携・支援に関わっています。
ご自宅でのお薬の管理方法など、お薬のことならかかりつけの薬局にお気軽に問い合わせてみてください。
薬剤科
ALS患者の絵本~つるまき温泉病院物語~
入院患者さまの中には、様々な不安や心理的な葛藤を抱えている患者さまがいらっしゃいます。リハビリスタッフは少しでも患者さまの苦痛の軽減が図れるよう関わっています。
今回、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さまと一緒に「つるまき温泉病院物語」という絵本を作成しました。同じ病気で苦しんでいる人たちと2人の娘さまに対する思いを込めて絵本を作りました。
ストーリーは入院生活のエピソードをもとに患者さまが考え、イラストは担当作業療法士が描きました。進行していく病気と向き合いながら、伝えたいことを何度も何度も考えながらできた1冊です。
完成後、患者さまより「自分の気持ちを整理できて良かった」「気持ちが落ち着いた」「みんなに知って欲しい」との感想が聞かれました。
皆さんにも読んで頂ければと思います。
(追記)
絵を描いた作業療法士が絵本を読みました 鶴巻温泉病院 YouTube
絵を描いた作業療法士が絵本を読みました。鶴巻温泉病院のYouTube ユーチューブや公式Facebookページでご覧いただけます。※音声が流れますのでご注意ください。
嚥下内視鏡検査(videoendoscopic evaluation of swallowing : VE)について
神経難病では病状の進行とともに高率に嚥下障害を合併し、食事中のむせ込みが目立つようになり時には肺炎発症に至ります。肺炎を始めとした重篤な病状において経口摂取ができない期間が続くと、さらに嚥下機能障害が進行します。患者さんの生活の質(QOL)向上のため嚥下機能の維持は重要な要素です。嚥下リハビリテーションの可否・必要性や適切な食形態を決定するためには嚥下機能評価が必須です。
嚥下機能評価検査には嚥下内視鏡検査(VE)と嚥下造影検査(VF)がありますが、VEは検査室に移動せずベッドサイドで容易に施行可能で、放射線被ばくがないことがメリットです。
VE検査では喉頭内視鏡(カメラ)を鼻から挿入し、カメラの先端が咽頭(のど)に達すると喉頭蓋(気管の蓋)、声帯、食道入口部が観察できます。まずは咽頭内の唾液の溜まり具合や咳の反射の起こりやすさを判定します。
嚥下内視鏡検査(VE)
その後、少量の着色トロミ水やゼリーを飲み込んでもらいます。飲み込むタイミングではカメラには何も映らなくなり(ホワイトアウト)、飲み込む様子そのものは観察できませんが、飲み込みが起こるタイミングや飲み込んだ後の咽頭内の残留物の程度を観察することにより、嚥下状態を類推することができます。
上記の観察結果をスコア化(一般的には兵頭スコアが用いられます)し、スコアにより嚥下訓練の可否や訓練の程度を判定します。
【閲覧注意】嚥下内視鏡検査(VE)動画です。喉頭内視鏡(カメラ)を鼻から挿入し、咽頭部の動きの状態を観察します。
【閲覧注意】クリックでVEの動画(YouTube)が表示されます。字幕ONで簡単な説明が表示されます。
鶴巻温泉病院 障がい者・難病リハビリ病棟 医師 清水 学