第8回 筋筋膜性腰痛 ぎっくり腰 腰椎分離症
腰にまとわりつくテリア犬
厚労省の統計では日本人の訴える身体症状では腰痛が最も多いそうです。80%の人が一生に一度は腰痛を訴えます。スポーツをする人もしない人も持っている腰痛ですが、どうして腰が痛くなるのでしょう。
腰の骨や椎間板は痛みを感じません。痛みを感じるのは骨の周りの筋肉や筋膜と骨や椎間板の変化で圧迫され刺激される神経です。筋肉が痛みの原因である場合、筋筋膜性腰痛(きんきんまくせいようつう)といいますが、ひどいときにはいわゆるぎっくり腰になります。筋筋膜性腰痛では前屈をすると痛みがひどくなります。一方神経の痛みの場合は足、特にお尻とふくらはぎの裏にびりびり走る痛みが起こります。これが坐骨神経痛です。
テニスやゴルフのように決まった方向に身体のねじれを繰り返すと椎間板の変性が進みます。変性が進むと骨のバランスが崩れて周囲の筋肉に負担がかかり、炎症が起こって腰痛になります。椎間板が弱くなると椎間板の一部が外へはみ出し有名な腰椎椎間板ヘルニアになります。
これとは別に小さい頃から野球やサッカーなど足腰をよく使うスポーツをしている人がなる腰痛があります。腰椎分離症といい腰椎の後ろに張り出している椎弓(ついきゅう)が使いすぎで疲労骨折を起こしたものです。高校や大学生になって腰痛が起こり、始めて診断がつくことがよくあります。悪化すると骨が前後にずれる腰椎すべり症になることもあります。この場合は腰をそると痛みが強くなります。
診断はまず腰椎のレントゲンで行います。腰椎を斜めに撮ると椎弓がテリア犬の形に見えます。このテリア犬に首輪が嵌(はま)っているように骨が抜けていると腰椎分離症と診断します(写真)。写真を見てください。テリア犬と首輪が見えますか?
腰椎分離症は腰痛を持つ若い人の10%位の人に見られます。スポーツをやる人はやらない人の3倍も分離症になる確率が高くなります。診断がついたら3-4ヶ月運動を禁止し、コルセットをします。その間に骨が癒合する場合もあります。症状が無くなったらまたスポーツを再開することは可能ですが、予防が大切です。
イラストbyひろき
さあ皆さん前屈してみて下さい。身体が硬い人は腰痛予備軍です。特に大腿の裏のハムストリングスという筋肉群が硬い人ほど腰痛になりやすい人です。
ストレッチで大腿とハムストリングスを柔らかくしましょう。腹筋背筋の強化も腰痛の予防に役立ちます。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
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執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太