第2回 扁平足と足底筋膜炎 -シューズに感謝-
先日、ちょっとがんばって3時間テニスをしたら、右足の踵と土踏まずが痛くなり、歩くのがやっとという感じになってしまいました。皆さんはそういうことはありませんか? あまりひどいので整形外科で診てもらいましたが、踵の骨に変化が来ているのと、偏平足(へんぺいそく)で足底筋膜炎(そくていきんまくえん)になっているとの診断でした。どちらも体重増加、肥満が原因です。おなかが出てくると背骨をそるような姿勢を取るようになります。そうすると身体の重心が後ろに移って踵に負担が来て骨に変化が起こります。また体重が増えると足のアーチがつぶれて偏平足になり、足底筋膜が引っ張られます。テニスなどの運動でそれを繰り返すと炎症が起き痛みが生じます。

皆さんは偏平足は生まれつきのものだと思っていらっしゃるかもしれません。でも偏平足の最も多い原因は大人になってから起こる静力学的偏平足と言うものです。その原因は肥満や筋力低下です。現代人は歩かなくなったのでこの静力学的偏平足が増えていて、特に私のように痛みを伴う偏平足が増えています。偏平足には内反足や外反足のように足の垂直な軸が歪んだ状態の人がなりやすいようです。私も右足にマメ(鶏眼)があって右足の軸が曲がっていたようです。偏平足は足の中の関節の緩みなので、残念ながら筋肉をいくら鍛えても形は直すことはできません。
では治療はどうしたら良いでしょう。まず身体の重心を少し前に持ってくるように意識する必要があります。電車に乗ったときにつま先で立っていると随分筋力が付きます。またタオルを伸ばして敷き、その上に足を載せ、足の指でタオルを手繰り寄せて足の土踏まずの下にタオルを全部集める運動が有効です。
2004年アテネオリンピック、2008年北京オリンピック(4x100m リレー銅メダル)の陸上に出場した末續 慎吾選手の足の裏を見たことがありますか?まっ平らな足の裏です。これは偏平足というより足底筋がものすごく発達して足の裏がまっ平らになったものです。でもこのように筋肉を鍛えるのは大変ですし、時間と努力が必要です。痛みを起こさなくするためにすぐに効果があるのは靴の底敷き(インソール)です。

私の場合はリハビリ病院の理学療法士に足を見てもらって、私のテニスシューズにオーダーメードのインソールを作ってもらいました。それ以後どんなに長くテニスをしても足底筋膜炎にはなりません。オーダーメードではありませんが既製の底敷きも役に立ちます。内反足や外反足などのように足の軸が曲がった人は背骨に負担が掛かるので腰痛、肩こりを起こします。ですからそのような意味からもインソールは大切です。もう少し経ったら自分にあったオーダーメードの靴を履くというのが流行るかも知れません。
アテネオリンピックの女子マラソンで金メダルをとった野口みずき選手が、ゴールしたあとシューズに感謝してキスをしていました。それほどシューズは大切なものなのです。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
知って得する身体の話 INDEX
時々知らなくても良いことや、知らないほうが良かった話もあるかもしれません。気軽に読んでください。
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- 第2回 扁平足と足底筋膜炎 -シューズに感謝-
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執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太