第11回 メタボリック症候群 -類は友を呼ぶ-
数年前に盛んに言われていたメタボリック症候群。健康を保つために予防が大切だということで、注目されています。全国で2000万人くらいが当てはまるそうです。メタボリック症候群の基準は以下のようになっています。貴方はどうですか?
- 腹囲(必須) 男性85cm以上 女性90cm以上
以下のうち二つ以上
- 1.血圧>135/85mmHg
- 2.中性脂肪(TG)が150mg/dl 以上もしくは善玉コレステロール(HDLC)が40mg/dl以下
- 3.空腹時血糖 110mg/dl以上
本来は内臓脂肪が多い人が対象なのですが、内臓脂肪は腹部CTをしないときちんと測れません。そこで腹囲を代用として使うことにしたわけです。腹囲といってもズボンのウエストではありません。おへそのところかお腹で一番出っ張ったところを測ってください。
メタボリック症候群だと心筋梗塞になる危険が約3倍、糖尿病になる危険が5-10倍あるそうです。若いうちからこれを意識して肥満、生活習慣を改善することで個人の健康を維持し、さらに日本人の使う国民総医療費を削減できるというわけです。ポイントは肥満に加え今までは病気と言わなかった正常上限レベルの項目が2つ以上あれば病気予備軍として扱うといことです。
ハーバード大学から面白いデータが発表されました。配偶者が肥満だとそうでない人に比べて肥満になる確率が37%も増えるそうです。夫婦の場合は食生活が同じですから理解できます。夫婦になるとなんとなく印象が同じように見えてくるのもこれが一因ではないでしょうか。でも更に驚くことに友達が肥満の人はその人が遠く離れていても肥満になる確率が57%も増えるのだそうです。
男性の友人同士だと100%増加しますが、女性同士だと38%、異性では相関関係はないそうです。肥満になりたくなければ配偶者と同性の友達をちゃんと選べということです。でも離れた友達も肥満に影響するとは何と不思議なことでしょう。同様の姿をみることで安心するのでしょうか?人間の心理と身体の関係は奥深いものがありますね。
そういえば私が太ったのもAという太った友達ができた頃だったような気もします。皆さんも誰かのせいにするのは簡単ですが、決してその人のせいだとか思ってはいけません。あなた自身の責任を忘れないでください。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
知って得する身体の話 INDEX
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執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太