第5回 巨人の星とアタックNo1「オスグッド・シュラッター病」
ご存じの世代の方へ。「巨人の星」と「アタックNo1」と言ったら何を連想するでしょう?
根性、漫画・アニメ、昔懐かしい60年代、と結構ありますね。「巨人の星」は1966年から週間少年マガジンに連載され、1968年からテレビアニメが放送されました。一方アタックNo1も同時代で、1969年からマーガレットに連載されて、同じ1969年からテレビアニメが放送されました。どちらもスポーツ根性もので、1964年の東京オリンピックのバレーボールチーム「東洋の魔女たち」の特訓が影響しているのだと思います。私も中学生の時に少年マガジンの巨人の星を読んでいました。
今回のテーマはこの二つのアニメの共通点「うさぎ跳び」です。
うさぎ跳びは両足を地面につけたまま膝を深く曲げて腰を落としてぴょんぴょん飛ぶ運動です。かなり苦しいので、トレーニングの意味以外に罰則や根性を鍛える意味でグランド一周とか階段上りきった上までとか決めて行われました。そんなことあたりまえと言う方もいらっしゃると思いますが、最近の子供たちは知らない子供もいますし、知っていてもやったことがなかったりするのです。なぜかというとうさぎ跳びは成長期の子供には良くないのでやってはいけないと禁止されてしまったからです。
うさぎ跳びは無理な姿勢で、股関節、膝関節、足関節を深く曲げ、その関節に強い負荷がかかります。このような運動はトレーニングとしての効果より、関節や筋肉を傷める可能性のほうが高いので禁止されたのです。
膝の下に骨が飛び出ている人はいませんか?私も左の膝の下の骨が飛び出ています。これは「オスグッド・シュラッター病」と言い、オーバーユースによる成長期のスポーツ障害として有名な病気です。
成長期は急に身長が伸び特に足の大腿骨が長くなりますが、筋肉や腱はすぐには伸びません。そうすると大腿四頭筋が引っ張られた状態となり、一時期身体が固い柔軟性がなくなった状態(いわゆる筋肉が固い状態)になります。この時期にジャンプやダッシュ・キックを繰り返す運動をすると大腿四頭筋腱が付いている膝下の脛骨粗面部が引っ張られてこの部分に痛みや腫れが生じ、骨が出っ張ってくる病気です。
陸上競技、サッカー、バスケット、バレーボールなどいろいろなスポーツで生じますが、一番問題とされたのがうさぎ跳びです。うさぎ跳びのように膝を屈曲して伸び上がるとものすごく大腿四頭筋が引っ張られるので、うさぎ跳びはまさに「オスグッド・シュラッター病」になるための運動だったのです。このような理由で、うさぎ跳びは禁止され、運動プログラムから消えました。
でも、うさぎ跳びの格好、つまりウンコすわりはそれなりに良い面もあるのです。大腿四頭筋を伸ばしますし、体のバランスをとる訓練にもなります。跳んだり急に伸び上がったりしないように注意すれば身体を柔らかくするのに役立ちます。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
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執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太