第14回 脳卒中後の回復期リハビリテーション
脳梗塞と脳出血は、ともに脳血管の異常によって起こる病気で、 これらを合わせたものが一般に脳卒中といわれています。脳梗塞は昔は脳軟化といわれ、 脳出血は脳溢血といわれていました。 脳梗塞は脳の血管が動脈硬化で詰まっていく脳梗塞と、主に不整脈等で心臓の中に血の塊ができ、それが脳に飛んで脳の血管を詰めてしまう脳塞栓があります。脳出血の中には主に高血圧が原因で脳の中に出血する脳出血と、もともとある脳動脈瘤が破裂して脳の外側に出血するくも膜下出血があります。詳しいことは私のコラムの「病気の話」のそれそれの項目を見てください。
脳卒中は厚生省の統計では脳血管疾患として分類されています。 以前は日本の国民病といわれるほどで、死因の第1位でしたが、食生活の変化や、塩分の制限、高血圧の治療が行き届くようになったために死亡例、重症例が減ってきました。最近では悪性新生物(癌)、心疾患、肺炎に抜かれ、死因の第4位になりました。死亡例はへっていますが、脳卒中、特に脳梗塞になる患者数は増えており、高齢者の認知症や寝たきりになる最も多い原因疾患と考えられますので、予防が大切な病気です。
脳卒中になると急性期病院で治療をしますが、麻痺や失語、飲み込み等の障害が残った場合は、回復期リハビリテーション病院(病棟)で集中的なリハビリを受けることができます。回復期の目的は寝たきりを防いで、自宅へ帰すことです。ただし条件があり、脳卒中発症、もしくは脳卒中の手術を受けてから2カ月以内でないと回復期の病院には移れません。

今回知っておいていただきたいて、得することは、脳卒中発症から回復期リハビリテーションに転院する時期が早ければ早いほど回復が良く、しかも早く退院できるということです。急性期病院がとてもいいところだからと言って長居をしていると、回復期に移れなくなり、ひいては自宅への退院がずっと遅れてしまいます。

急性期では入院して治療が終わるとすぐに回復期に移りなさいという話になり、まるで追い出されるようだと思っている方も多いかと思います。でもそれは決して追い出しているのではなく、あなたのためなのです。ご自分から進んで回復期リハビリテーション病院を探して移ってください。ただし意識が悪かったり、肺炎があったりしてリハビリができない場合はすぐに移れないことがありますので、入院中の病院にご相談下さい。
鶴巻温泉病院では、家で料理ができないと困るとか、階段が登れないと生活できない、運転の評価をしてから自宅へ帰りたい等、軽症の方でも2週間から1カ月の短期間集中リハビリのプログラムも用意しています。近々ロボットリハビリ訓練も導入する予定です。ぜひお問い合わせください。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
知って得する身体の話 INDEX
時々知らなくても良いことや、知らないほうが良かった話もあるかもしれません。気軽に読んでください。
- 第1回 熱中症 -凍ったペットボトルの効能-
- 第2回 扁平足と足底筋膜炎 -シューズに感謝-
- 第3回 金属アレルギー、接触性皮膚炎 -溶けるピアス-
- 第4回 骨粗鬆症(こつそしょうしょう) -やっぱり牛乳が一番-
- 第5回 巨人の星とアタックNo1「オスグッド・シュラッター病」
- 第6回 憧れの筋肉痛 「遅発性筋肉痛」
- 第7回 骨折-人間誰でもリモデリングで生まれ変われる-
- 第8回 筋筋膜性腰痛 ぎっくり腰 腰椎分離症
- 第9回 緊張型頭痛 ストレスと病気
- 第10回 変形性頚椎症 椎間板ヘルニア -上を向いて歩こう-
- 第11回 メタボリック症候群 -類は友を呼ぶ-
- 第12回 膝蓋骨高位症、変形性膝関節症 -足が長い人の悩み-
- 第13回 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)、上腕骨内側上顆炎 -工事現場の交通整理とテニス肘-
- 第14回 脳卒中後の回復期リハビリテーション
- 第15回 闘争モードになるまでの時間 交感神経の働き
- 第16回 プレッシャーの呪縛 副交感神経を活性化するには
- 第17回 365歩のカロリー
- 第18回 熱中症とツルゴール反応
一般にはあまり知られていないことや、少し知っておくと役に立つことなども取り上げていますので、参考としていただければ幸いです。気になる症状がある方は、かかりつけ医にご相談いただき、専門の医療機関を受診することをお勧めします。
執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太