第4回 骨粗鬆症(こつそしょうしょう) -やっぱり牛乳が一番-
骨を丈夫にするためにはカルシウムが必須です。体内にあるカルシウムのうち99%は骨に蓄積されていて、残りの1%が血液や体の他の細胞にあるのです。カルシウムの働きは骨を作っているだけではありません。残り1%のカルシウムが色々な臓器の細胞を働かせていて、これがないと人間は生きていけません。脳の細胞もカルシウムがないと全く働きません。ですから血液中のカルシウムの濃度を一定に保ち細胞に十分なカルシウムが行くようにすることが大切なのです。
それには女性ホルモン(エストロゲン)や副甲状腺ホルモンが関係しています。エストロゲンは小腸でのカルシウム吸収を促進し、腎臓での活性型ビタミンDの生成を促進します。女性が更年期になるとエストロゲン分泌が減少し、カルシウム不足になります。血液中のカルシウムが少なくなると副甲状腺ホルモンが作用して骨を溶かしてカルシウムを血液中に放出します。そうすると骨がどんどん弱くなります。これが良く聞く骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。

日本人の必須カルシウム摂取量は一日最低600mgです。成長期の子供や妊婦は900mg必要で、母乳で育児をしている場合は更にたくさんのカルシウムが必要です。カルシウムは体内で作ることができませんし、食べ物からのカルシウムは吸収されにくいので多めに摂取することが必要です。骨折のあとの骨の再生もカルシウムがないとできません。スポーツをしたときもカルシウム必要量が増加します。
でも最近の日本人の子供はカルシウムが足りないといわれます。その理由のひとつが加工食品やインスタント食品の摂りすぎです。加工肉や練り物、スナック菓子にはリン酸塩が多く含まれています。リン酸塩は折角摂ったカルシウムと結合してリン酸カルシウムになってしまい、吸収されずに体外に出てしまうのです。
カルシウムを摂りましょうと言うと決まって牛乳を飲みましょうという話になります。牛乳はカルシウムをたくさん含んでいますし、カルシウムの吸収率が断トツに高いのです。でも牛乳をたくさん飲んでもカルシウムが吸収されなければだめです。カルシウムの吸収にはビタミンDが必要です。ビタミンDは青魚や卵、椎茸などに多く含まれます。牛乳とビタミンDを一緒にとればカルシウムの摂取量が増大します。

ビタミンDの素は皮膚にたくさんありますから、夏なら木陰で30分、冬なら日光浴1時間でビタミンDが必要量作られます。皆さんも骨を強くしたいと思ったら、きのこを食べて牛乳を飲んだ後、太陽の光を浴びながら運動をしましょう。
鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太
知って得する身体の話 INDEX
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執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太