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食べたい思いを叶える食事 ~ミキサー蕎麦の提供~
今回は、嚥下障害のある患者様の「食べたい思いを叶える食事」として、かき揚げ蕎麦を提供したお話をします。

患者様は飲み込みの機能に障害があり、きざみ食にとろみをつけた嚥下調整食(飲み込みやすい形に調整した食事)を召し上がっている方です。当初は蕎麦の種類を検討し、通常より長い時間ゆでることで麺を軟らかくして、とろみをつけた汁で提供しようと思いました。
しかし蕎麦はうどんや素麺など他の麺に比べ、水分過剰になると短く切れてしまいます。またデンプン質は、ミキサーにかけるとべたつき、嚥下調整食には向きません。悩んだ末に、ミキサー食レシピ集にある「ミキサー蕎麦」を作ろうと考えました。
ミキサー蕎麦は、ゆでた蕎麦に水分を加えてミキサーにかけます。一度ペースト状にし、介護用の食品で固めて麺の形に成型します。このようにすることで、べたつき感をやわらげ、噛まずに食べられる硬さに調整することができます。
さらに試作を行う中でいくつかの課題も生まれました。
まず、蕎麦と水の割合です。蕎麦をミキサーにかける際には、水を加えなくてはなりません。水分が多くなると蕎麦特有の香りが弱まり、少ないと粘度が高まってペースト状にすることができません。そこで水の割合を調整し、蕎麦の風味と食感を大切にしたレシピを作りました。
次に、「かき揚げ」です。
かき揚げの風味を出すために、揚げ玉にサクラエビを加えました。サクラエビは粉末にすることで香りが立つため、かき揚げ蕎麦の風味に近づけるのではないかと考えました。

左上にかかっている白いものはミキサーにかけたネギです。かき揚げ風にするため揚げ玉を汁でふやかし、サクラエビをフードプロセッサーで粉末にしたものを上からかけました。
患者様は、初めは麺の太さをみて苦笑されていましたが、「かき揚げ蕎麦の味はしますか?」という問いかけに対し、笑顔で答えてくださいました。
今回のミキサー蕎麦を提供するにあたって、食べやすさに加えて蕎麦の見た目と風味を、できる限り患者様の思い描いているものに近づけることにこだわりました。それは、食べたいという希望を叶えるために、また食べることを続けて頂くために欠かせないことだと思っています。管理栄養士として患者様へ食事を提供していく中で、これからも大切にしていきたいと思います。
栄養科 管理栄養士
ミキサー蕎麦(麺のみ)の作り方[一人前]
- 【材料】
- 流水麺*1・・・・・・・・1/2人前(100g)
- 水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・[蕎麦の重量]の1.5倍(150ml)
- スベラカーゼ*2・・・・・・・・・・・・・・[蕎麦の重量+水の量]の2%(5g)
- 【道具】
- ミキサー
- バット(四角い耐熱容器なら可)
- 片手鍋
- ホイッパーまたは木ベラ
- 【準備】
- バットにラップを敷いておく。
- 【方法】
- 1.蕎麦をキッチンばさみや包丁で2~3cmに切る。
- 2.切った蕎麦をミキサーに入れ、水を半分加えてミキサーにかける。
- 3.ある程度粘度が出てきたら、残りの水を加えて、粒が残らないペースト状*3になるまでミキサーにかける。
- 4.ペースト状になった蕎麦を鍋に移し、スベラカーゼを加えて弱火にかける。
- 5.ホイッパーなどを使い、底が焦げ付かないようにまんべんなく混ぜる。
- 6.全体的に気泡ができ、沸騰してきたら火を止め、手早くバットに移し*4厚さが1cm程度になるよう平らにのばす。
- 7.粗熱をとり、30分程度冷蔵庫で冷やし固め、全体が固まったら包丁で麺の形に切る。
- *1:乾麺や生麺でも作れますが、今回は自宅でも手軽に調理できるよう流水麺を使用しました。
- *2:市販の介護用食品の一種で、酵素の働きによりでんぷん食品特有のべたつき感を抑えることができるゼリー食の素です。
- *3:粒が残っていると麺が均一に固まらず、ばらけてしまいます。
- *4:常温でもすぐに固まるため、手早く移してください。

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