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鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 TEL 0463(78)1311

障がい者・難病リハビリ病棟スタッフコラム

障がい者・難病リハビリ病棟】の最新情報や取り組みをお伝えしています。

ジュウマンブンノイチ ダメ親父のALS闘病記 「妻からのメッセージ」

2017.09.20

ALS闘病記「妻からのメッセージ」

彼が入院してからも私の耳には時々彼の絶叫が聞こえて来た。その時彼が私を強く要していたのか、フラッシュバックだったのか。

彼が肺炎になってから 私も時々胸が痛く苦しくなった。彼の苦しみが頂点に達した時だったのだろうか。

7月22日 早朝 彼は旅立った。51歳の誕生日を迎えて10日目だった。自覚から3年、確定から2年3ヶ月、仕事を辞め2年、入院から1年2ヶ月だった。

私達は彼さえ本気で望めば そこそこ恵まれた環境にあった。彼さえ受け入れてくれればデイに通わずとも在宅介護が出来た筈だった(公的+私的アルバイトでまわす)。彼さえ本気で望めば、もっと支援を受けやすい地への転居も可能だった(24時間公的な人材を派遣してもらえる市がある)。

進行が早いこの病は迅速な判断と行動が必要で、彼が少しでも話せるうちに実行に移し新たなスタッフさん達とコミュニケーションをとる必要があった。

早い段階から保健師さんソーシャルワーカーさんに相談にのってもらい、ALS協会と繋がりを持ち、胃瘻の造設、リルテック、エダラボン投薬も順調に出来ていた。(当初から多めに栄養を摂取し体重を維持させていた。これも予想より寿命をのばした一因かもしれない。介護は体重がある分大変だった)

元々 彼は、生活の変化を好まない人だった。彼の負担になりにくく在宅介護しやすい環境を提案しても、ことごとく却下した。保健師さんが何度も説得してくれた。ドクターが諭してくれた。けれど、彼は 私には勿論、ケアマネージャーさんにも凄んだ。

周囲の意見を聞き入れず 自分の分を超えた行動を単独でとり、ケガを繰り返し、騒いだ。(買い物に一緒に行かなくなったのは車椅子に乗るのを頑なに拒否した為。ヘルパーを派遣してもらう事も拒んだ。自分の病を正しく理解しようとせず何事にも積極的ではなかった)

一部のALS患者に、前頭側頭型認知症(FTD)に似た症状が出るという。それは、病気そのものの進行の他に本人や介護者にとって大きな負担になるという。彼は、それだったのではないか。一旦パニックを起こすと、家族ではどうしようもなかった。元々の性格と、不自由な身体の為の性格の変化なのかは首を傾げる。

只、公的助成が状態に追いつかず後手にまわった事が彼をより気難しくさせ 気力も失わせたのは確かだ。

病院のスタッフさんは、そんな彼の意見を尊重し、だからこそ一層たいへんになった看護、介護を根気強く続けて下さった。彼も、身体は不自由ながらもそれなりに快適に楽しそうに過ごしていた。

在宅時から鶴巻訪問看護ステーションを利用し、本人のみでなく家族の心も気づかってもらった。同じ三喜会 鶴巻温泉病院に入院してからは、大勢のスタッフさんが入れ替わり立ち替わり彼の元に来てくれ、まるで彼の家族代わりになろうとしてくれているかのようだった。仕事が生きがいだった彼の新たな『生きる糧』になるよう、このように手記も掲載させて下さったのだと思う。

彼の呼吸が苦しい時も、常に労りの言葉をくれた。彼が意識を失い、死に移行していく過程でも、亡骸になった後も、ずっとずっとそれは変わらず、彼と私達に声を掛け続けて下さった。その姿は神々しく美しく、とても癒された。

体の一部は現世にあっても、彼は今、お釈迦様の元に居る。彼は、この不可解な病気の原因究明の為に献体となり、身体を捧げた。既成概念の「かたち」に拘らず、同じ病、同じ苦しみを持つ人が一日も早く救われるよう、彼と同じ考えを持つ患者や家族が増えることを強く願う。

働き者だった彼は、生き急ぎ過ぎた。病気を自覚してからは辛い中、よく頑張り抜いた。

当初の予想より入院後は進行が緩やかだったのは、投薬の効果、在宅時の週6日の入浴(デイにて)、週3回の訪問マッサージ、週1,2回のリハビリ、入院後の病院でのケア(心と口腔含む)、室温、彼の状態に合ったリハビリ、配慮された食事の成果だと思う。

私達に寄り添って下さったすべての方々に感謝致します。ありがとうございました。 妻

2017年8月 記

介護をされている方へ

C病院のドクターの『自分が悪者になりなさい』という御言葉には『妻は自己犠牲し夫や家族に献身的に尽くすのが美徳』という古い考えと戦いなさい と言う意味も含まれていると私は受けとりました。ご自身の身体も労ってください。

鶴巻温泉病院さんはレスパイト入院を最短一ヶ月毎としているそうです。在宅とのルーティンを慣例化してしまえればずいぶん負担が減ると思います。楽することは悪ではありません。

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