blog_27 身体拘束廃止へ向けて
病院では治療上の安全や、転棟・転落を防ぐために、患者さんの腰ベルトや、手にミトン手袋をはめることがあります。これを身体拘束(抑制)といいます。でも当院の職員は身体拘束をしたいと思ってしているわけではありません。そのため当院では2008年に身体拘束廃止検討委員会ができ、身体拘束をなくそうと努力してきました。
2010年の委員会のアンケートでは、殆どの職員が身体拘束を受けている人の気持ちについて考えていました。また「車椅子等に縛る行為は当然だ」と思っている人はいませんし、60%の人が別の方法をとるべきだと考えていました。
委員会では「いかなるケアの工夫をもってしても、身体拘束以外に安全確保の代替方法がないと判断した場合は、医師の指示の基づき、患者・利用者本人、又は家族の理解を頂いた上で行う。但し、身体拘束を実施した場合は・・(中略)・・出来る限り速やかに廃止を進める努力をする。」とあります。
でも実際には身体拘束が減っていない現状がありました。そこで、三家本看護部長と委員会メンバーが10月に「身体拘束ゼロ」を実現している埼玉県富家病院に見学に行きました。その見学の感想です。
『見学に訪れた富家病院はナースコールが少なく静かで明るい、清潔で安全な環境が整えられていました。そこには病院の意図的な取り組みがありました。委員会のメンバーが抑制を体験し「生命に危険が無い限り、抑制はいらない」と実感されたそうです。この体験者の強い意志が抑制廃止に向けて強いリーダーシップを発揮されていました。
廃止開始時は、昼夜を問わず看護部長への電話がなりっぱなしだったそうです。抑制廃止に向けて各職種が自分の業務を超えて患者さんを中心に見守り支えあっている仕組みが出来ていることには驚きと感動をおぼえました。
抑制を解除する事により転倒や、NG抜去の不安はあるでしょうが、「抑制で安全を保障する」という考えを変えて、抑制を外すことで得られる尊厳とより人間らしい日常生活を優先して当院での「抑制廃止に向けて」新たにスタートしたいと思いました。
お忙しい中、病院見学を快く受けて頂きました富家病院の皆様に心より感謝申し上げます。』
『長年、拘束廃止に向けて取り組んできた歴史がありますが、患者さんの安全と安心、抑制を外したくても外せない現状に対してのジレンマに悩まされています。委員から他施設への見学希望もあり、院長から紹介された富家病院の見学が実現しました。全職員が病院の理念や方針を実践するという強い意識が必要であること。又、全職員で患者さんやご家族を支援するという意識の高さが「拘束ゼロ」を継続できているのだと感じました。
当院は危険行動から事故に至らないように回避器具を使用して、事故を予防しています。富家病院は違ったんです。
安全を回避することは大前提ですが、例えば、「どうしたら安全に転べる環境が作れるか」等、常に「誰のための抑制なのか」を考え「安全」に療養生活を送って頂くために患者さんの目線で尊厳あるケアを提供できるように検討していきたいと思います。』
委員会では更に「身体拘束を廃止することは決して容易なことではない。患者・利用者本人及び家族の理解を頂きながら、病院全体として全員が強い意志を持ち、一丸となり廃止に向けて取り組んで行く。」とあります。
今回鶴巻温泉病院の方針として、もう一度「身体拘束ゼロを目指す」ことを再確認し、その達成に向けて病院一丸となって頑張っていこうと思っています。
2011年11月12日 鶴巻温泉病院 院長 鈴木龍太
湘南メディカルセンター 湘南リハビリテーションセンター