blog_16 鶴巻着楽(つるまききらく) ホスペックス2010
皆さん骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という病気を知っていらっしゃると思います。更年期以降の女性に多く、高齢になるほど骨が弱くなり、骨折し易くなる病気です。もちろん男性にも起こります。
宇宙ステーションに長期間滞在した宇宙パイロットを調べたところ骨密度が正常の20-30%に低下し、高齢女性と同じ程度になっていたそうです。これは宇宙に重力がなく骨に全く過重がかからないので骨がどんどん柔らかくなるためだそうです。
寝た姿勢が長い患者さんにも同じようなことが言えます。元気な高齢者でさえ骨粗鬆症になるのですから、自分で動けない患者さんが骨粗鬆症になるのは不思議ではありません。このような患者さんの骨はちょっと強く握るとつぶれてしまうほど弱くなっているそうです。
鶴巻温泉病院には脳卒中やほかの病気で片麻痺があったり、手足を自分では動かせない患者さんが大勢入院されています。このような方の手足は関節が硬くなり動かなくなってきます。この状態を拘縮(こうしゅく)といいます。
骨粗鬆症があって、拘縮がある患者さんを着替えさせるときに、寝巻から腕を抜いたり、オムツを当てるために足を開いただけで骨折が起こることがあります。患者さん・家族に辛い思いをさせますし、ケアをする職員にも大変な負担がかかります。そこで職員が色々工夫をして、着替えるときに拘縮した関節に力がかかりにくく、骨折を予防できる寝巻きを開発しました。
患者さんには点滴や経管栄養のチューブ、おしっこの管(バルーンチューブ)が入っている場合があります。開発した寝巻はそういったチューブ類もこんがらがらないで外へ出せる仕組みや、ボタンやチャックなどの出っ張りで褥瘡(じょくそう:床ずれ)にならないような配慮もしてあります。名前は着て楽なことから「鶴巻着楽(きらく)」と名付けました。これから患者さんに試してもらいますので是非協力してください。
11月17日から11月19日の3日間 有明の国際会議場で国際医療福祉機器展示会(HOSPEX)という展示会がありました。全世界から3万人が集まった展示会です。
鶴巻温泉病院はこの「鶴巻着楽」を展示し、大好評でした。250の展示がありましたが、福祉機器を作っている会社が殆どで、病院が展示をしているのは鶴巻温泉病院ただ一つでした。「鶴巻着楽」は病院だけでなく、老人施設や在宅でも必要なものだと思っています。これから多くの人に使っていただくのが開発した職員たちの夢です。
話は別ですが骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と早口で3回言って見て下さい。すらすら言えた人は「脳が若い」と自信を持って良いと思います。
鶴巻温泉病院 院長 鈴木龍太
湘南メディカルセンター 湘南リハビリテーションセンター