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「味がしない」~患者さんの言葉に込められた意味~

2017.05.12

2階東病棟に入院されたKさん、当初はご自分で食事を摂ることができず、食事量は通常の半分にまで減っていました。

入れ歯は合わなくなり、歯がなくても食べられる食事形態へ変更せざるをえませんでした。最初の食事はお粥と、細かく刻んだ肉の炒め物とほうれんそうのお浸し。

一口食べて、ひとこと。

「味がしねえな。」

味がしないから食べないと仰り、数口召し上がっただけで食事を終えました。
どのような味付けがお好みか伺うと、「和食を好み、洋食は食べない」とのこと。しかし残された献立は和食。おかずの味付けが薄く感じ、お粥がすすまないのではないかと佃煮を用意しましたが、感想はやはり「味がしない」でした。

「味がしない=塩気が少ない」ではありませんでした。

私はKさんの「味がしない」という言葉の意味について考え、あることに思い至りました。Kさんは農家で、新鮮な野菜や果物を毎日食べておられました。しかし病院の食事は、細かく刻まれ、見た目、香り、食感が全て異なっていました。

Kさんの仰る「味がしない」は「食材本来の味がしない」という意味だったのです。


新鮮野菜


「味がしない」の意味は理解できたものの、Kさんの噛む力、飲み込む力を考えると希望される食事で必要な栄養を摂ることは困難な状況にありました。

そこで、Kさんの食べる力と食の好みに配慮した食事プランを提案。毎日Kさんのもとへ通ううちに、パン粥や缶詰のフルーツなど、甘いものを好んで召し上がっていることに気付きました。Kさんからも「この甘いの、毎食出してよ」との希望が聞かれ、翌日よりキザミ食に甘味をとり入れた食事へ変更し、食事量は徐々に増えていきました。


パンがゆ

(左)パン粥:「パンを千切って牛乳と砂糖で煮たもの。当院では、嚥下食としても提供するため耳を切り落とした食パンを使用しています。」(右)フルーツ缶詰のペースト


入院2ヶ月後には体重が増え、栄養状態も改善されました。何より、ご家族が定期的に自宅農園で採れた野菜を軟らかく調理してもって来てくださることが、Kさんの食べる意欲につながっているのではないかと思います。


お浸し:「青菜のお浸し」とニンニク:「ニンニクの素揚げと自家製味噌」

お浸し:「青菜のお浸し」とニンニク:「ニンニクの素揚げと自家製味噌」


私は、Kさんの「味がしない」という一言を、管理栄養士の視点から「味が薄い」という意味に捉えてしまいました。しかし、生活歴やご本人の今までの食事習慣を理解していくうちに、Kさんが伝えたかった本当の意味を知ることができました。

これからも患者様に寄り添ったケアを続けていくためには、生活習慣や嗜好から患者様の言葉の背景を考え、管理栄養士として"食事のかかわり"につなげていきたいと思います。

栄養科 管理栄養士 石田 彩乃


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