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スタッフコラム

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2017年8月

神経難病の治療と病棟の役割|第3診療部長 中島 雅士

2017年8月

 今回のスタッフ・コラムでは、神経難病の治療と、その治療におけるわれわれの障害者・難病リハビリ病棟の役割について説明します。神経難病にはいくつかの種類がありますが、その多くは成人してから発症し、しゃべる、食べる、歩く、排泄する、などの日常生活に必須の機能が徐々に害(そこな)われていきます。

 病気の始まる年齢も疾患によって異なりますが、早くは30歳代から、遅い場合でも60歳代に始まることが多く、日常生活だけではなく、仕事や今後の人生設計についての見直しを迫られます。


初期神経難病の診断と治療

img1.png 神経難病の診断は難しいものではありません。経験を積んだ神経内科医であれば、病気の経過を尋ねること(病歴聴取・問診)と身体所見の診察(神経学的診察)で、たとえ疾患の初期であっても80%以上の確率で診断できます。補助診断として核磁気共鳴画像検査(MRI)、脳代謝・血流検査(PETまたはSPECT)、筋電図、各種自律神経機能検査などがあり、これらの結果を総合して薬物をはじめとする治療方法を選択します。

 しかし、神経難病を患う方々が求めることは、その診断名と治療だけではなく、自分の病気がどのような経過をたどり、その過程で現われてくる障害にどのように対処し、あるいは障害を受け入れてよりよい人生を送っていくことにあると思います。

parkinsons.png 神経難病の中でも頻度の高いパーキンソン病は、手を使う、歩く、しゃべるなどの運動機能が障害されますが、脳内のドパミンという化学物質(神経伝達物質)の働きを増強する薬物、または脳深部電気刺激による運動症状の治療効果が高い疾患です。しかし、これらの治療の開始から10年を経ると、個人差はありますが、脳内のドパミンがつかさどるもう一つの機能であり、ニコチンやコカインへの依存にも関与するドパミン作動性報酬系の影響が強く出て、精神的な抑制が効かなくなることがあります。

 精神的に安定した生活を優先するためには、日常生活の介護依存度が高くなっても薬物の投与量を控えるという治療を選ぶこともできます。


進行期神経難病の療養と治療

 日本の多くの大学病院、総合病院では、神経難病の診断には時間をかけるものの、その後は短時間の外来診察でくすりの種類と量を調整しています。このような診療では、患者とその家族のよりよい生活のために助言し、将来起こりうる重い障害(例えば食べ物が飲み込めない、動くと息苦しい、など)の時期を予測し、それぞれの患者の人生観に重きをおいた医療介入(例えば人工的栄養・水分補給、気管切開、あるいは機械的補助呼吸)の選択または非選択について話し合っていくことはできないでしょう。


img2.png私が1995年から1998年まで勤務していたカナダのブリティッシュ・コロンビア大学/バンクーバー総合病院の筋萎縮性側索硬化症(ALS)クリニックでは、ALSを患う方々の日常診療はかかりつけ医が担当し、3~6ヶ月に一回の外来診察で一人の患者に2時間をかけて、病気の進行状況を問診・診察と筋電図検査で判断します。

 さらに神経難病の登録看護師は、患者の家庭を訪問し、同じ疾患で苦悩する患者またはその家族との出会いを提案することもあります。こうした様々なアプローチを通じて、神経難病を患う方々の自らの意思による延命的医療介入の選択または非選択(どのような延命治療を受けたくないか)を援助していきます。

British Columbia大学 Andrew Eisen教授

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Vancouver総合病院 Clinical Fellow

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