診療部より

リハビリと療養に携わる医師のリレーエッセイ

リレーエッセイ

vol.5 神経難病:ALS(筋萎縮性側索硬化症)について
2008.06.26

神経難病リハビリセンター 三橋成輝医師筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis; ALS)は、筋肉を動かす命令を出したり伝えたりする運動神経細胞が原因不明に死んでゆくことによって、全身の筋力低下や筋のやせが生じる病気です。私たちは普段手足を動かすだけでなく、ものを飲み込んだり呼吸をしたりしていますが、これらも筋肉の働きによっています。ALSでは、こうした働きも障害されるため、個人差はあっても3-4年で呼吸や食事ができなくなって亡くなります。

神経難病リハビリセンターホームページへ

治療として、寿命を3ヶ月程度延ばす効果が認められている内服薬(リルゾール)があるものの、筋力低下や呼吸障害の進行は止めることはできません。根治療法もまだありません。
人口10 万人当たり年間0.4~1.9人発病し、同じく10万人当たり2~7人の患者さんがいらっしゃいます。2:1で男性が多く、発症のピークは50〜60代となっています。5〜10%は遺伝性ですが、大多数は孤発 (その人だけの発症)です(参考「日本神経学会ALS治療ガイドライン2002」)。


人工呼吸器、胃瘻(腹壁経由の経管栄養)といった方法を使えば、10年単位での寿命の延長が可能です。 意識状態は発症以前と同様に保たれますから、意思疎通をいかに行なうか、ということが大変重要になります。近年、カードや文字盤といった従来からの方法に加え、コンピューターを用いたコミュニケーション機器が使えるようになってきました。その結果、以前よりもさらに積極的に、世界に向けて情報を発信することも可能となっています。


現時点では長期療養できる病院・施設が大変限られているため、在宅療養が基本と考えられます。ただし介護が重度になりやすいため、家族の肉体的・精神的疲労軽減を図り、介護の破綻を防ぐために地域によるケア・ネットワークを構築することが必須です。具体的には、訪問看護、訪問介護、往診、心理的ケア、レクリエーション、レスパイト(介護休暇入院)あるいは緊急入院、といった患者さんを取り巻く環境の有機的なつながりが保てるような整備を、例えばケア・マネージャーが中心となって行なう、といったことが挙げられます。


呼吸器などの使用の有無にかかわらず、患者さんとその家族ができるだけ無理なく、不安なく、暮らすことができれば、精神的尊厳を保ち、疾患と共に人間らしく生きるという姿勢をもつことがより容易になるのではないでしょうか。


診療部 神経難病リハビリセンター
神経内科 三橋  成輝

戻る
診療部
このページの先頭へ

banner_sblog.gif