menu
鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 TEL 0463(78)1311

障がい者・難病リハビリ病棟スタッフコラム

障がい者・難病リハビリ病棟】の最新情報や取り組みをお伝えしています。

パーキンソン病の睡眠障害と治療|第3診療部 中島 雅士

2018.04.26

 パーキンソン病では運動障害に加えて、さまざまな睡眠障害が病初期から進行期までにしばしば認められます。不眠、レム睡眠行動異常症、夜間頻尿、下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)、周期的四肢運動症、睡眠時無呼吸、などさまざまな種類の睡眠時異常が単独に、または組み合わさって起こることで睡眠が障害されます。

 それぞれの睡眠障害については後に簡潔に述べますが、パーキンソン病において最も多く報告されている障害は断続的睡眠、すなわち、まとまった深い睡眠が得られず、睡眠がしばしば中断されるという現象で、パーキンソン病患者の40%にみられたと報告されています。この断続的睡眠はパーキンソン病の初期からみられ、病期が進むにつれて頻度が増します。

 その原因にはまたさまざまな要因がありますが、特に運動症状(動きにくさ)の夜間または早朝における増悪、パーキンソン病に固有の痛み、むずむず足症候群、睡眠時無呼吸、抑うつ状態、夜間頻尿などが重要な原因であると考えられています。

 これらの要因はパーキンソン病脳の神経変性と関連するものですが、パーキンソン病治療薬の副作用として現れている場合もあると考えられます。パーキンソン病の代表的治療薬であり、かつ運動症状に対して最も確実な効果を示すL-ドーパ(商品名メネシット、マドパー、など)の投与量が増えるほど断続的睡眠が起こりやすくなるという報告があり、これは脳内ドパミン濃度の変動が影響していると考えられます。

 そこで、脳内ドパミン作動薬の、特に夜間における濃度を安定させて断続的睡眠を治療する試みが行われています。ロチゴチン(商品名 ニュープロ)は皮膚に貼る貼付剤で、ドパミン作動薬が徐々に血液中に吸収され、24時間にわたって脳内で一定の濃度を保つように工夫されています。

 2010年代に入ってから、欧米ではこのロチゴチンが冒頭に述べたさまざまな睡眠障害を持つ患者に試され、その結果として断続的睡眠の改善が得られたと報告されてきました。当院でも、ロチゴチンを就寝前に貼付することによって、複数の患者で、夜間または早朝の動きにくさまたは脚の痛み、レム睡眠行動異常症、夜間頻尿、むずむず足症候群などによる断続的睡眠の改善が得られています。

 パーキンソン病の主要な症状である体の硬さ、動きにくさ、ふるえなどの運動症状以外の症状は非運動症状と総称されます。その中にはここに紹介した睡眠障害以外にも、痛み、ドパミンに対する精神的依存などがあり、その中にはL-ドーパまたはドパミン作動薬の過剰に関連したものもあります。パーキンソン病の治療では、医師と相談しながら適量のくすりを定期的に内服するとともに、過量の内服を避けることも大切です。

用語解説

■レム睡眠行動異常症:睡眠周期の一つで夢を見る周期であるレム睡眠期に、大声で寝言を叫ぶ、壁を叩く、殴る・蹴る、歩き回るなどの行動異常を伴うもの。

■下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群):じっとした姿勢や横になった時、主として下肢(脚)にさまざまな不快感が生じて動き回らずにはいられなくなる状態。

■周期的四肢運動症:入眠期に手足が周期的にビクビクっと動く状態。むずむず脚症候群とは異なって、この運動は睡眠中だけに起こり、手足の不快感によるものではない。多くの場合に患者はこの運動を自覚していないが昼間の眠気を訴える。

2023年4月一部更新

鶴巻温泉病院 第3診療部 中島雅士
日本内科学会認定内科医、日本神経学会神経内科専門医、日本神経学会指導医、難病指定医

入院・在宅サポート入院(レスパイト入院)のご相談

  • 地域連携室
  • ご予約受付:月~土曜 9:00~17:00
  • TEL:0463-78-1319(直通)
  • FAX:0463-69-5665(直通)
  • 入院相談専用フリーダイヤル:0120-131-146
  • 院長ブログ
  • 私たちのサービス
  • 看護師採用情報
  • リハビリテーション部採用情報
  • わかりやすく解説 病気に話
  • 知って得する身体の話
  • メールマガジン
  • 在宅療養後方支援病院